食卓に並んだ家族全員分の大皿料理から、誰の取り分も考慮せずに猛烈な勢いで自分の胃袋へと流し込む。外食先で子どもが食べるはずのセットメニューにまで平然と箸を伸ばす——。こうした異様な行動の根底には、一般には理解しがたい特異な認知の歪みと心理構造が存在します。
心理カウンセラーや夫婦問題の臨床現場において共通して指摘されるのは、食い尽くし系夫の心理における「心理的バウンダリー(自他境界)」の完全な崩壊です。健全な人間関係においては、「これは自分の分、あれは家族の分」という暗黙の境界線が無意識に働きます。しかし彼らの脳内では、視界に入った食べ物はすべて「今すぐ自分が消費可能な対象」としてしか知覚されません。
さらに深刻なのは、食い尽くし系夫の自覚がないという病理です。配偶者から「なぜ残しておいてくれなかったの?」と咎められても、返ってくるのは「そこにあったから」「早く食べない方が悪い」「食べ物を粗末にするなと言われて育った」という身勝手な自己正当化です。自らの行動が他者の権利を暴力的に侵害しているという認識が決定的に抜け落ちており、悪意がないどころか「自分が綺麗に片付けてあげた」と善意にすり替える認知の歪みすら見受けられます。