『ちびまる子ちゃん』に登場するクラスメイトの多くは、原作者であるさくらももこ氏の少女時代の同級生がモデルになっています。親友のたまちゃん(穂波たまえ)や、はまじ(浜崎憲孝)、花輪くん(実在の大金持ちの同級生女子を男児に置き換えた設定)など、実名あるいは実在の人物をベースにしたエピソードは広く知られています。そのため、視聴者の間では長年「野口さんにもモデルとなった小学生が実在したのではないか?」という説が囁かれてきました。
しかし、公式記録およびさくら氏が生前に残したエッセイやインタビューを紐解くと、野口さんに直接の実在モデルは存在しないことが判明しています。彼女は完全なるオリジナルキャラクターであり、もっと言えば「原作者・さくらももこの分身」とも呼ぶべき存在です。
さくらももこ氏自身、幼少期から落語、演芸、マニアックなお笑い番組を愛し、日常の些細な人間模様を斜め後ろからじっと観察しては一人でほくそ笑むような子どもでした。周囲と無理に同調せず、自分のアンテナに引っかかった面白いものだけを偏愛する野口さんのスタンスは、まさにクリエイターとしてのさくら氏の視座そのものです。主人公・まる子がお笑いを表面的に楽しむミーハーな消費者であるのに対し、野口さんは本質を見抜く真の批評家として描かれており、この対比こそが作品のコメディとしての強度を一段引き上げました。