『傷だらけの天使』における木暮修と乾亨の関係性は、従来のドラマにあった台本通りの主従関係や定型的な友情劇とは一線を画していました。現場では監督陣(深作欣二、恩地日出夫、神代辰巳ら)の演出のもと、萩原健一と水谷豊による生々しい即興劇(アドリブ)が次々と繰り広げられました。
有名な水谷豊の「アニキ〜!」という独特の甲高いイントネーションや甘えを帯びた呼びかけは、台本に細かく指定されていたものではなく、現場のセッションの中で自然発生的に研ぎ澄まされていった表現です。萩原健一の予測不能な身体表現に対し、水谷豊が天性の勘と卓越したリズム感で打ち返すことで、あの唯一無二のグルーヴ感が完成しました。
衣装面でも、萩原健一が自ら持ち込んだ「BIGI」の先進的なスタイリングに対し、水谷豊は革ジャンにリーゼントという不良スタイルを確立。東京・代々木の木造ビル屋上に佇むペントハウスを舞台に、貧しくもスタイリッシュに生きる二人の姿は、当時の若者文化を根底から揺さぶる社会現象となりました。