那須烏山市を訪れるなら、まず押さえておきたいのが地域のアイデンティティを象徴する名所群です。長い歳月をかけて培われた歴史の重みと、地球の鼓動を感じさせるダイナミックな景観が訪問者を魅了します。
街の最大の誇りといえるのが、毎年7月下旬に開催される「山あげ祭」です。永禄3年(1560年)、烏山城主の那須資胤(すけたね)が牛頭天王(ごずてんのう)を祀り、疫病退散と五穀豊穣を祈願したことが起源とされています。450年以上の歴史を刻む山あげ祭のハイライトは、幅約8メートル、高さ十数メートルにも及ぶ巨大な組み立て式の「山」(烏山和紙を何重にも貼って描かれた背景画)を若衆たちが人力で立ち上げ、その前で華麗な野外歌舞伎舞踊を披露する点にあります。国の重要無形民俗文化財、さらにはユネスコ無形文化遺産にも登録されたこの祭礼は、町衆の一糸乱れぬチームワークと職人技の結晶であり、見る者を圧倒するエネルギーに満ちています。
自然観光の筆頭は、江川にかかる幅約65メートル、落差約20メートルの大瀑布「龍門の滝」です。滝壺に大蛇が棲んでいたという伝説からその名が付き、水量豊かな水しぶきが舞い散る様子は壮観そのもの。滝のすぐ上流をJR烏山線の車両が通過する瞬間は、鉄道ファンのみならず絶景写真の撮影スポットとして絶大な人気を誇ります。隣接する観光交流拠点「龍門ふるさと民芸館」の展望テラスには「龍門カフェ」が併設されており、滝の轟音とマイナスイオンを間近に感じながら、地元の焙煎豆を用いた香り高いスペシャルティコーヒーや手作りスイーツを楽しめる特等席となっています。
歴史散策なら、国指定史跡である「烏山城跡」の見どころも見逃せません。中世から近世にかけて那須氏や大久保氏の拠点となった山城で、八高山(標高約206メートル)の稜線を巧みに利用した堅固な縄張りが現存しています。特に、全国的にも珍しい石垣工法である「吹墨石垣」や、攻防の要所となった七曲口、壮大な空堀・土塁の遺構は、城郭ファン必見の学術的価値を持っています。木漏れ日が差し込む静寂の登城路を歩けば、かつての武士たちの息遣いが肌に伝わってくるかのようです。