転勤辞令が告げられた家庭では、具体的にどのような変化が起こるのでしょうか。SNSや大手Q&Aサイト、当事者のブログや手記に寄せられる体験談を検証すると、教科書通りのメリットと同時に、当事者しか知り得ない過酷な日常が見えてきます。
まず、単身赴任家族の反応は初期と中期以降で大きく変化します。辞令が出た直後は、配偶者・子どもともに「寂しい」「なぜうちが」という不安と困惑が支配的です。しかし、赴任生活が数ヶ月を経過すると、残された家庭では「父(母)不在の新たな日常ルーティン」が確立されていきます。ある当事者の記した手記には、次のような生々しい心境が吐露されています。
「週末に自宅へ帰ると、家の中の配置や生活のリズムが完全に妻と子どもだけで完成していた。自分が良かれと思って手を出した家事が妻の機嫌を損ね、まるで自分が家族の平和な日常を乱す『お客さん』のような居心地の悪さを感じた」
ここで改めて、単身赴任メリットデメリットを整理してみましょう。
【単身赴任のメリット】
・家族の生活基盤(子どもの学校・友人関係、配偶者の仕事)を維持できる
・本人は家事や家族の雑事から解放され、仕事に100%集中できる環境が手に入る
・赴任先での新たな人間関係や知見が広がり、自立的なスキル(家事能力など)が身につく
・適度な距離感ができることで、かえって夫婦間の無駄な小競り合いが減る場合がある
【単身赴任のデメリット】
・家計の二重負担が発生し、可処分所得と貯蓄が大幅に目減りする
・自宅に残された配偶者が「完全なワンオペ育児・家事」に追われ、疲弊する
・子どもの成長における重要な瞬間(行事、思春期の悩みなど)を共有できない
・赴任者本人が孤独感を募らせ、偏った食生活から健康を害しやすい
現場の証言から明らかなのは、単身赴任の成否は「残された配偶者のワンオペ負担をいかに軽減できるか」と「本人が孤立せずに自己管理できるか」の2点に完全に依存しているという事実です。