伊丹の街並みを走り回る市営バスの車窓から、幼い有村は何を見ていたのか。近所の人々の証言によれば、幼少期の彼女は決して「目立ちたがり屋のキッズタレント志望」ではなかったという。むしろ、放課後は一人で読書に没頭したり、静かに絵を描いたりする時間を好むおとなしい少女だった。
しかし、その物静かな佇まいの裏には、観察者としての鋭い眼差しが潜んでいた。周囲の人間がどんな表情をし、どんな言葉の裏に感情を隠しているのか。無意識のうちに人間の多面性を見つめていた体験が、のちに役柄の心理を深く読み解く素地となったことは疑いようがない。過度に着飾らない等身大の感覚は、この伊丹での生活によってしっかりと培われたのだ。