パンデミックをきっかけに普及したハイブリッドワークや完全在宅勤務は、住環境に対する要求を劇的に変えた。かつては「夜寝るためだけの場所」だった自宅が、24時間執務を行い生活する拠点となったことで、住人同士の活動時間のレイヤーが複雑に重なり合うようになったのだ。
日中に集中してデスクワークを行っている際、上階から聞こえる断続的な「ドスドス」という歩行音は、作業の集中力を容赦なく削ぎ落とす。ある騒音トラブル専門の行政書士によると、近年寄せられる相談の半数以上が「日中の在宅仕事中に耐えられない」という内容だという。
建物の構造問題も無視できない。築年数の浅い高層マンションであっても、床の「太鼓現象」によって特定の周波数の足音が強調されるケースがある。コンクリートのスラブ厚が十分であっても、フローリングの施工方法や二重床の空間構造によっては、歩行衝撃音が低音となって階下へ伝幅・増幅されてしまうのだ。