早期発見を極めて困難にしている元凶は、初期症状の曖昧さにあります。発症初期に現れる変化は多岐にわたり、以下のような日常的な不調と見分けがつきません。
初期に観察される代表的な徴候:
- 「なんとなく視界がぼやける」「物が二重に見える」といった原因不明の視覚異常
- ふらつき、階段を踏み外す、箸がうまく使えないなどの小脳性運動失調
- 集中力の低下、無気力、抑うつ、不眠といった精神神経症状
- 言葉が出にくくなる、物忘れが目立つなどの急激な認知機能低下
一般的なアルツハイマー型認知症では、病状が年単位で緩やかに進行しますが、孤発性CJDにおける余命と進行速度は極めて過酷です。発症からわずか数週間から数か月で日常会話が成り立たなくなり、音や光の刺激に反応して手足がビクッと跳ね上がる「ミオクローヌス」が出現します。そして平均して3〜4か月以内には、自発的な言葉を発せず自力で身動きも取れなくなる「無動性無言(無言無動状態)」に陥ります。
診断確定から無動性無言を経て全身衰弱に至るまでの期間は非常に短く、全経過の平均余命はおよそ1年から2年未満。肺炎などの合併症が直接の死因となる例が多く、家族が病状の悪化を受け止める精神的猶予をほとんど残さない点が、この病の残酷さでもあります。