心電図検査は、心臓が拍動する際に発生する微弱な生体電気を体表から記録する検査です。正常な心筋は電気を通しますが、壊死して線維化した心筋は電気的に活動しない「沈黙の組織」へと変貌します。健康診断の波形判定で医師が見逃さないのが、無症候性心筋梗塞の心電図に現れる特徴的な病態痕跡です。
心筋梗塞を発症した心臓では、時間の経過とともに劇的な心電図のST変化の経過をたどります。発症直後(超急性期)には「T波の先鋭化」、数時間後には「著明なST上昇」が発生し、数日から数週間かけてST部分が基線に戻ると同時に、下向きに尖った「陰性T波(冠性T波)」が出現します。
そして最終的に心筋が完全に壊死して電気を通さなくなると、電極は心臓の反対側の電気信号を壊死部を通して直接拾い上げるようになります。その結果として生じるのが、幅が広く深い谷のような形状を描く陳旧性心筋梗塞の異常Q波(壊死性Q波)です。加えて、心筋梗塞を起こした部位の周囲に虚血が残存している場合、陳旧性心筋梗塞の陰性T波が長期間にわたって併存し続けます。