新宿三丁目という超一等地に構える店舗の前に、なぜこれほどまでに人が集まり続けるのか。その背景には、江戸・東京の都市史と結びついた歴史的ブランド力と、妥協のない製造プロセスが存在します。歴史を紐解くと、室町時代の武将・太田道灌が江戸城築城の折に鷹狩りの途中で立ち寄り、団子を献上されたことに始まると伝えられています。江戸時代には甲州街道の宿場町「内藤新宿」の追分(分岐点)で旅人の足を止め、現代に至るまで新宿の象徴的な銘菓として定着してきました。
しかし、単なる歴史の古さだけで現代の消費者の舌を満足させ続けることはできません。追分だんご本舗の最大の強みは、毎朝職人が粉から仕込む「朝生(あさなま)の製法」を頑なに守り抜いている点にあります。市販の大量生産型だんごに多用される増粘剤や日持ち向上のための添加物を極力排除し、厳選された国産上新粉(米粉)と水、そして職人の手加減による絶妙な蒸し・搗き(つき)の工程を経て作られます。この徹底した鮮度管理こそが、一口噛んだ瞬間に広がる米本来の甘みと、歯切れの良さを生み出す源泉となっています。