本作が日本のテレビドラマ史に刻まれる金字塔となった背景には、主要キャストが挑んだ妥協なき役作りが存在します。特に佐藤健と鈴木亮平が見せた身体と精神の極限に挑むアプローチは、放送当時から業界内外で大きな衝撃を与えました。
主演の佐藤健(秋山篤蔵役)は、料理シーンにおいて一切の吹き替え(代役スタント)を使わないという覚悟で撮影に臨みました。クランクインの数か月前から服部栄養専門学校に通い詰め、包丁の握り方から姿勢、野菜の千切りや桂剥きまで、プロの料理人同等の基礎訓練を徹底的に重ねました。特に劇中で幾度となく登場するタマネギのみじん切りは、自宅でも毎日大量に刻み続け、指先を切りながら技術を体に染み込ませたといいます。さらに、流暢なフランス語のセリフや福井弁の習得にも膨大な時間を費やし、破天荒さとひたむきさを併せ持つ篤蔵のキャラクターに圧倒的な説得力を与えました。
一方、篤蔵の夢を誰よりも信じ、自らの命を削って弟を支えた兄・周太郎を演じた鈴木亮平(秋山周太郎役)の肉体改造は、今なお語り草となっています。東京帝国大学(現・東京大学)法科大学院に通うエリートでありながら結核に侵され、徐々に病に蝕まれていく役柄を演じるため、鈴木は半年間で約20kgに及ぶ壮絶な減量を敢行しました。
鈴木亮平は当時、本作の撮影直前まで別の作品(映画『TOKYO TRIBE』など)で筋骨隆々の肉体を作り上げていましたが、そこから一転して徹底したカロリー制限と有酸素運動を行い、肋骨が浮き出るまでに身体を絞り込みました。現場では飲食物を徹底管理し、極度の飢餓状態の中で撮影に挑んでいたことが制作陣の手記やインタビューでも明かされています。兄としての慈愛に満ちた眼差しと、死期が近づく人間のリアリティを全身で表現した鈴木の演技は、視聴者の涙を誘い、第8話の別れのシーンはドラマ史に残る名場面として絶賛されました。