なぜ象の造形は、時代や国境を越えてこれほどまでに人々を惹きつけるのか。その歴史的源流を辿ると、巨匠たちが試行錯誤の末に生み出した「削ぎ落としの美学」に行き着く。
ウォルト・ディズニーが手掛けた不朽の名作『ダンボ』を見れば一目瞭然だろう。アニメーターたちは現実のアフリカゾウやアジアゾウのシワだらけの皮膚をあえて排し、柔らかな曲線と巨大な耳の対比によって、守ってあげたくなるような無垢な感情を視覚化してみせた。重苦しいはずの巨獣が、軽やかに空を飛ぶというファンタジーの説得力は、この徹底したデフォルメ設計から生まれている。
一方、フランスの絵本作家ジャン・ド・ブリュノフが生み出した『ぞうのババール』も極めて象徴的だ。ブリュノフは均一でシンプルな輪郭線を用い、鮮やかなグリーンのスーツを着こなす知的な象を描き出した。複雑な陰影を捨て去り、シルエットの美しさと丸みだけで感情を語らせるこの文法こそ、現代のイラストレーションの基礎となっている。