都心の旗艦店を訪れると、最初に驚かされるのが「箱積みされた在庫」がほとんど見当たらないことだ。代わりに用意されているのは、完全に再現されたリビング、キッチン、書斎などの居住空間である。
来場者は靴を脱ぎ、ソファに座り、まるで自分の家のように過ごす。最新の調理家電で実際に試食を作り、空間オーディオの音響効果を体感し、ロボット掃除機がラグの段差をどう乗り越えるかを間近で観察する。売りつけるための接客はここにはない。あるのは「暮らしの未来像」の提示だ。
ある大手チェーンの店長は明かす。「商品を売るのではなく、体験を買っていただく。体験して納得できれば、購入の決済は店頭のQRコードからスマホで行い、配送指定をする。持ち帰りの重さから解放された顧客は、手ぶらで買い物や食事を楽しんで帰られるのです」