SNSやネット掲示板、家計相談の窓口では「年収600万円なのにまったく豊かさを感じない」「勝ち組なんて幻想だった」という嘆きが日常的に投稿されています。客観的には上位20%にいるはずの人々が、なぜ困窮感を口にするのでしょうか。
取材現場や家計診断のデータから見えてくるのは、勝ち組と言われる理由と真相のギャップです。
都市部に暮らす30代後半・子育て世帯の男性(メーカー勤務・年収610万円)は、次のように胸の内を明かします。
「独身のころは『年収600万になれば高級車に乗れて年に何度も旅行できる』と思っていました。ですが結婚して子どもが2人でき、郊外に分譲マンションを買った途端、景色は一変しました。スーパーでは値引きシールを意識して買い物をし、外食は月1回のファミレス程度。決して貧困ではないものの、世間が言うような『勝ち組の優雅さ』とはかけ離れた現実があります」
この現象の背景には、3つの構造的な要因が存在します。
第一に、「中所得層への公的支援の薄さ」です。年収600万円世帯は、各種給付金や医療費助成の所得制限ボーダーライン付近に位置することが多く、住民税非課税世帯のような手厚いセーフティネットの恩恵は受けられません。
第二に、「生活防衛コストと物価の上昇」です。食料品や電気代、日用品の断続的な価格改定は、可処分所得を確実に削り取っています。
第三に、社会心理学でいう「相対的剥奪感」です。職場や周囲の交友関係が同等以上の年収層で固まることで、SNSで目にする他人の消費行動と無意識に比較し、「自分はまだ足りない」「豊かではない」と自己評価を下げてしまう構造が定着しています。