逃げ場のない日本を離れ、彼が選んだのはニューヨークだった。2018年、かつての栄光も知名度も通用しない異国の街へ、身一つで渡る。待っていたのは、狭いアパートでの質素な暮らしと、一般の留学生に混ざって通う語学学校の日常だった。自炊をし、地下鉄に乗り、演劇学校のワークショップで発声練習を繰り返す日々。そこにはチヤホヤされるスターの姿は微塵もなかった。
「自分は何者でもない」という事実を骨の髄まで叩き込まれる時間。だが、この孤独な空白期こそが、彼の内面を根本から作り変える契機となる。他言語でのオーディションに挑み、オフ・ブロードウェイの舞台関係者と対話する中で、表現することへの飢えと、かつて自分に与えられていた環境への深い感謝が芽生えていった。驕りを削ぎ落とした先に残ったのは、やはり「芝居をしたい」という純粋な渇望だった。