宇治の地に佇む「辻利兵衛本店」の門をくぐると、静寂の中に漂う芳醇な茶の香りが五感を包み込む。ここで供される削氷の真骨頂は、濃厚な宇治抹茶の旨味を泡状に閉じ込めたエスプーマかき氷だ。亜酸化窒素を使ってきめ細かく仕立てられた抹茶フォームは、口に含んだ瞬間にふわりとほどけ、奥深い苦味とまろやかな甘みが一気に広がる。
特筆すべきは、氷の温度管理だ。冷凍庫から出したばかりの硬い氷を削るのではなく、表面がわずかに緩むまで寝かせた「温度を上げた氷」を使用する。これにより、極限まで薄く削られた氷片が抹茶の泡と一体化し、頭にキーンとこない驚異的な口どけを生み出している。茶葉本来のポテンシャルを極限まで引き出した一杯は、抹茶スイーツの到達点といっても過言ではない。