俳優としての火野正平は、まさに唯一無二の存在感を放っていた。名作時代劇『新必殺仕置人』で見せた盗賊・正八役は、コミカルさと哀愁が同居するハマリ役となり、お茶の間の人気を確固たるものにした。松竹などの映画会社が手がける本格的な映画業界作品でも、バイプレイヤーとして欠かせない異彩を放ち続けた。
役者としての多忙な日々は、同時に極度のプレッシャーとの戦いでもあった。撮影現場で見せる鋭い演技の裏で、神経をすり減らしていた彼を癒やしたのは、自宅で待つ家族の存在だった。どれほどロケが長引いても、自宅へ戻れば一人の父親、そして夫としての顔に戻る。彼の圧倒的な表現力は、家庭という揺るぎない土台があってこそ花開いたものだ。