デッドリフトで腰を痛めてしまう人の大半は、単に「筋力不足」だからではありません。バイオメカニクス(生体力学)の観点から現場を検証すると、「支点となる腰椎とバーベルの水平距離(モーメントアーム)」が広がっていることが腰痛を引き起こす最大の要因です。
床からバーベルを引き上げる際、バーがスネから数センチ離れるだけで、腰椎にかかる剪断力(ズレる力)は跳ね上がります。正しいデッドリフトフォームの基本は、バーベルが常にスネや太ももを擦るほどの至近距離を通り続ける軌道を維持することにあります。
動作習得で欠かせないのが「ヒップヒンジ(股関節の蝶番運動)」です。膝を前に突き出すのではなく、お尻を後方へ引き込み、股関節の屈曲を使ってバーを掴みます。このとき、息を大きく吸い込んで腹部を360度膨らませる「腹圧(腹腔内圧)」を高め、体幹を一枚の強固な板のように固定しなければなりません。腹圧が抜けた瞬間に負荷がすべて腰椎の椎間板へと集中し、痛みの引き金となります。