成田屋のお家芸である「荒事」は、単に豪快に立ち回るだけでは成立しない。体幹の強さ、押し出す声の圧力、そして何より観客を瞬時に引き込む「気魄」が求められる。父・市川團十郎は、息子に対して舞台の上では鬼師匠として徹底的な稽古を課してきた。
楽屋や稽古場でくり返される厳しい指導の根底には、四百年続く伝統を次世代へ引き継ぐという確固たる信念が存在する。父の背中を追いかけながら自らの表現を模索する姿には、脈々と受け継がれてきた歌舞伎の血脈が確かに息づく。緊張感漂う稽古場でのやり取りと舞台上での圧倒的なパフォーマンスは、互いへの深い信頼の証でもある。