事故の現場で加害者が必死の形相で「人身扱いにしないでほしい」と懇願してくる光景は、交通事故の現場取材でも頻繁に耳にする構図です。加害者がこれほどまでに物損事故としての処理に固執する理由は、事故が「人身」から「物損」になるだけで、科される法的責任の重さが天と地ほど変わるためです。
人身事故として警察に受理された場合、加害者には運転免許 違反点数と行政処分が容赦なく科されます。安全運転義務違反の基礎点数(2点)に加え、被害者の傷害の程度に応じて付加点数(軽傷でも3点〜6点以上)が加算されるため、これまでの累積点数次第では一発で免許停止や免許取消に直結します。特にトラックやタクシーのドライバー、外回り営業など、車が生活の糧である職業ドライバーにとって、免許の停止は即座に解雇や減給、業務停止という死活問題につながるのです。
さらに見逃せないのが、刑事処分 罰金 前科の有無です。人身事故を起こすと過失運転致死傷罪に問われ、検察庁へ送検された後に数十万円規模の罰金刑が科され、生涯消えない「前科」が付きます。しかし、物損事故のままで処理されれば、建造物損壊や当て逃げ等の特殊なケースを除き、道路交通法上の刑事責任は問われません。つまり、加害者にとって人身事故にしないメリットとは、行政処分による免停や前科の発生を合法的にすり抜ける唯一の防壁なのです。