ケトン臭が生じる直接的な契機は、生体が「糖質枯渇による疑似的な飢餓状態」に突入することにあります。炭水化物を極端にカットするケトジェニックダイエットや絶食療法を行うと、体内では以下のような代謝変化が連鎖します。
血中のグルコースが底をつくと、体はグリコーゲンを使い果たし、生命維持のために脂肪細胞から遊離脂肪酸を血中に大量放出します。肝臓はこの脂肪酸を取り込んでケトン体をフル稼働で産生しますが、体がケトン体をエネルギーとして効率的に活用する「ケトーシス状態(ケトン体適応)」に達するまでの過渡期には、使い切れなかった余剰なケトン体が血中に溢れかえります。その結果、呼気や尿、皮膚の毛穴からアセトン臭が濃厚に揮発し始めるのです。
過激な食事制限を行っている本人は嗅覚疲労により自らの臭いに気づきにくい一方、周囲からは「強い体臭・口臭」として明確に認識されるため、知らぬ間に対人トラブルや自尊心の低下を招くケースが後を絶ちません。