東京都内の公立小学校。算数の授業中、子供たちの卓上タブレットには異なる問題がリアルタイムで表示されている。カメラとウェアラブルデバイスが児童の視線移動や表情の変化、さらには脈拍データの変動まで捉え、「どこでつまずいているか」を判定する仕組みだ。
「以前なら、手が挙がらない子の理解度を把握するのに数日かかっていました」。そう明かすのは30代の担任教諭だ。今ではAIアシスタントが『A君は3分前から分数の計算で停滞中』と教員のスマートウォッチに通知を送る。得意な子は先へ進み、苦手な子は基礎に戻る。一見すると理想的な教育環境だ。
しかし、不安の種もある。常にアルゴリズムに観察される環境が、子どもたちの自由な試行錯誤や「無駄な雑談から生まれる発想」を奪っているのではないかという懸念だ。一部の保護者からは「効率ばかりを追い求め、子どもをデータセットとして扱っていないか」という疑念の声も漏れる。