一時期、歌唱番組や音楽特番への出演時に「音程が取れていない」「昔と声の出し方が違う」といった声がネット上で散見されました。しかし、これは単なる歌唱力の低下ではなく、片耳が完全に聴こえず、もう片方の耳も衰えている人間が受ける音響空間の過酷さに起因するものです。
人間は両耳の時間差・音量差によって空間認知を行い、自身の発声したピッチ(音程)を無意識にフィードバック調整しています。片耳を完全に失うと、数万人の歓声が反響する巨大ドームやアリーナ会場では「自分の声の音量」すら正確に測ることが極めて困難になります。
現場関係者の証言によると、浜崎あゆみはステージ上でウーファーの重低音による床の振動を足裏で感じ取り、ドラムのビートを視覚と触覚で同期させながら歌唱しているといいます。批判の対象となった一瞬のピッチのズレは、医学的・音響学的に極限状態の中で歌い続けている証左でもあります。