志村けんさんに限らず、昭和から平成にかけては著名人の死亡説や重病説が定期的に流布しました。この背景には、大衆心理とメディア環境がもたらす特有のメカニズムが存在します。
心理学における「確証バイアス」と「投影」がその代表例です。毎日のようにテレビで見ていた国民的スターの姿が少し途切れるだけで、受け手側は無意識に「喪失の恐怖」を抱きます。そこに「実は亡くなったらしい」という強い刺激を伴う情報が投じられると、真偽を確かめる前に他者へ伝達したくなる心理的衝動(社会的共有欲求)が働きます。
ネット掲示板やSNSが未成熟だった当時は、ファクトチェックを行う手段が「テレビのニュースを見る」「新聞を読む」に限られていました。公的な報道がなされていない空白の時間帯に、人々の間で「報道規制が敷かれているのではないか」という新たな陰謀論的解釈が生まれ、噂の信憑性が補強されてしまったのです。