ベトナム社会において、干支は単なる暦の記号にとどまらず、人々の運命観や人間関係の調和を司る精神的支柱として機能しています。その重要性が最も鮮明に現れるのが、年間最大の祝祭である旧正月「テト(Tết Nguyên Đán)」です。
テトの期間中、街中にはその年の干支を模した巨大なモニュメントや装飾が設置され、テレビ報道や新聞の新年特集も干支一色に染まります。特に重要視されるのが「初客(Xông đất / ソン・ダット)」と呼ばれる伝統儀礼です。
新年の幕開け後、家の敷居を最初に跨ぐ人物の干支が、その世帯の1年間の吉凶を決定づけると信じられています。家長は事前に暦の専門家や占い師に相談し、自分や家族の干支と「相生(合致して幸運をもたらす関係)」にある干支の親族・友人を特定した上で、元日の最初の訪問者として正式に招き入れるケースが現在も一般的です。