コミックス最終巻に収録された加筆ページでは、エレンが眠る丘の木を訪れるミカサのその後の生涯がサイレントで描かれました。青年期から老年期、そして息を引き取るまでの過程において、読者の目を最も引いたのが「傍らに立つ男性の後ろ姿と抱かれた赤ん坊」の存在です。
この男性の体格や特徴的な髪型、スーツの着こなしが同期のジャン・キルシュタインを強く想起させることから、ファンの間では「ミカサの結婚相手はジャンではないか」という見解が有力視されています。ジャンは物語初期からミカサの黒髪の美しさに一目惚れし、過酷な戦時下にあっても彼女を想い続けていた描写が一貫して描かれていました。第127話でジャンが思い描いた「内地での安寧な暮らし」の妄想に現れた妻と子供のシルエットも、この結末と綺麗に符号します。
さらに注目すべきは、老境に達したミカサの左手薬指に指輪がはめられている点です。一部では「純潔を守り生涯独身を貫いた」という見解も存在しますが、指輪と子供、孫に囲まれて穏やかに暮らす描写は、彼女がエレンを追悼し続けながらも新たな家庭を築き、人並みの幸福を享受した事実を示唆しています。原作者の諫山創氏はあえて男性の顔を明確に描かない手法を取ることで、個々の読者の受け止め方に委ねつつ、ミカサが「過酷な運命を乗り越えて天寿を全うした」という人間讃歌を提示したと評価できます。