数年前に世界中のメディアや機関投資家から「トヨタはEVシフトに乗り遅れた周回遅れ」と激しいバッシングを浴びていた時期を覚えているでしょうか。欧米勢が「2030年代前半に内燃機関を全面禁止する」と威勢の良い数値目標を掲げるなか、豊田章男は孤軍奮闘の様相で次の言葉を投げかけ続けました。
「敵は炭素であり、内燃機関ではありません」
この発言の真意は、各国の電力インフラ事情、再生可能エネルギーの普及率、資源調達の地政学リスクを無視した画一的なBEV化への警鐘でした。ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCEV)、水素燃焼エンジン車、そしてBEVという多様な選択肢を残す「マルチパスウェイ」こそが、真のカーボンニュートラルへの最短ルートであると説き続けたのです。
欧米での急激なBEV需要減速とハイブリッド車の記録的な再評価という形で、同氏の洞察は現実のものとなりました。単なる理想論ではなく、サプライチェーン全体で働く数百万人の雇用と実需を現場目線で把握していたからこその勝利と言えます。