単なるチョコスナックの好みが、なぜ40年以上にわたり国民的な議論として白熱し続けるのでしょうか。この現象は、マーケティング戦略と社会心理学の双方から非常に興味深い構造を示しています。
社会心理学の観点から見ると、この論争は「内集団バイアス(身内びいき)」を極めて安全に発露できる格好のツールとして機能しています。人間には、特定のグループに帰属し、他グループと区別することで自己肯定感を高めたいという根源的な欲求が存在します。政治や信条、収入といった現実の対立軸は人間関係を破壊するリスクを伴いますが、「きのこ派か、たけのこ派か」という対立には実害が一切ありません。誰一人として傷つかない「安全な分断」だからこそ、人々は安心して感情を露わにし、連帯感を楽しむことができるのです。
さらに株式会社明治のブランド戦略も秀逸を極めています。通常、企業は自社製品同士の共食い(カニバリゼーション)を避けるため、ポジショニングを明確にずらします。しかし明治は、両者をあえて同一価格帯・同カテゴリに並べ立て、消費者自らに甲乙をつけさせる「対立構図のエンタメ化」を意図的に推進してきました。2018年や2019年の国民総選挙のように、選挙権や党首演説を模したプロモーションを展開することで、消費者を単なる「購入者」から熱心な「支持者」へと昇華させることに成功しています。