心電図記録紙の中で、心室頻拍であることを100%証明する揺るぎない「決定打」となるのが、心房と心室が電気的に全く無関係に作動している房室解離 心電図所見です。通常の上室性頻拍では、心房から心室へ、あるいは副伝導路を介して心室から心房へと1対1で刺激が往復・伝達されます。しかし心室頻拍の多くでは、心室内の異常な発火頻度が毎分150回であるのに対し、洞結節は毎分70回前後のマイペースな洞調律を維持したまま独立して作動しています。
このとき、Wide QRS波の巨大な波の合間やT波の背中に、洞結節由来の正常なP波が規則的に割り込んでいる様子が観察されます。心室の興奮周期と無関係に独立して刻まれるP波を見つけ出せば、その瞬間に心室頻拍の確定診断が下せます。波形が激しく動く中でP波を見つけるのは熟練を要しますが、誘導の中で最も基線が安定している誘導(一般にII誘導やV1誘導)を拡大観察することがコツです。
そして房室解離が存在することの直接的な証明となるのが、心室捕捉 融合収縮(Capture beat / Fusion beat)の出現です。心室頻拍が暴走している最中、たまたま洞結節から房室結節を通過した正常な刺激が心室の不応期を脱した絶妙のタイミングで心室に届くことがあります。
心室全体が正常伝導系からの刺激によって脱分極した瞬間、頻拍の真っ只中に突如として幅の狭い正常なQRS波が1拍だけ出現する現象を「心室捕捉(キャプチャー)」と呼びます。一方、正常伝導系からの刺激と心室内の異常興奮が心室内で衝突し、半分は正常、半分は幅広の形となって出現するハイブリッドな波形を「融合収縮(フュージョン)」と呼びます。これらの波形が1拍でも確認できれば、心房と心室が別個に活動している動かぬ証拠となり、鑑別の迷いは完全に消え去ります。