国鉄が民営化に追い込まれた最大の理由は、雪だるま式に膨らみ続けた巨額赤字と累積債務にありました。1964年の東海道新幹線開業という華々しいトピックの陰で、国鉄の単年度収支は同年に初の赤字へ転落。その後、一度も黒字に浮上することなく経営は坂道を転がり落ちていきました。
赤字が急激に拡大した背景には、モータリゼーション(自家用車の普及)や航空機網の発達による鉄道需要の低下がありました。さらに深刻だったのが、政治的な圧力による不採算ローカル線の建設継続です。「我田引鉄」と呼ばれる政治家の利益誘導によって利用者の見込めない赤字路線が次々と敷設され、国鉄の財務基盤を根底から蝕みました。
加えて、運賃改定が国会の承認事項であったため機動的な値上げができず、赤字補填のために運賃を大幅に引き上げれば利用者が私鉄や車に逃げるという「悪循環」が加速。1980年代半ばには、年間の赤字が1兆円を超え、毎日数億円の損失を垂れ流す末期的な状況に陥っていました。