万全の対策を行っても、人間の身体構造上、完全にゼロに抑え込むことは困難です。そこで決定打となるのが、DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)環境でのポストプロダクション処理です。
現在、音声編集および楽曲制作の現場でデファクトスタンダード(業界標準)となっているのが、iZotope社の「RX」シリーズに搭載されている『Mouth De-click』モジュールです。
従来の一般的なディクリッカー(De-click)が音源全体の急峻なトランジェントを感知するのに対し、Mouth De-clickは口腔内の湿り気による特有のクリック音プロファイルのみを機械学習アルゴリズムで高精度に識別します。声の芯やアタック感を破壊することなく、ペチャ音だけをピンポイントで消し去ることが可能です。
効果的なプラグイン設定の手順は以下の通りです。
- Sensitivity(感度):デフォルトの「5.0」から開始し、原音の子音(特に「t」「k」「s」など)が削れて丸くなっていないかソロ再生で確認しながら、必要最小限の強度に調整します。
- Frequency Skew(周波数バイアス):リップノイズの大半が高域に偏っている場合は、Skewの値を高域側にシフトさせることで、声の低域〜中域の太さを完璧に保護できます。
- Click Widening(クリック拡張):ノイズの余韻が残る場合はわずかに数値を引き上げますが、上げすぎると声のアタックが濁るため注意が必要です。
DAW標準機能のみで対処する場合は、波形の拡大表示またはスペクトログラム表示を行い、発声開始直前や語尾に現れる「針のように尖った突起波形」をペンシルツールで滑らかに描き直すか、1ミリ秒〜5ミリ秒単位の極小フェードをかけることで違和感なく除去できます。