オール・フォー・ワンのセリフが読者に強烈な衝撃を与える最大の理由は、彼が「相手が最も言われたくない言葉」を完璧なタイミングで突きつける点にあります。戦況を有利に進めるためなら、他者の過去や家族の悲劇すら平然と道具として使い捨てる冷酷さこそが、彼の本領といえます。
その冷酷さが最も凝縮されていたのが、原作第11巻・アニメ第3期で描かれた「神野の悪夢」です。盟友である平和の象徴・オールマイトと対峙した際、彼はかつての師・志村菜奈について嘲笑混じりにこう言い放ちました。
「志村菜奈はさ、足手まといだったよ」「君の師は志村菜奈はさぁ!! 理想に実力がまるで伴わなかった!! 出来損ないのワン・フォー・オールを僕に押しつけ死んだ愚か者だ!!」
このセリフは、常に冷静沈着であろうとするオールマイトの感情を激しく逆撫でし、平静を失わせるための緻密な精神攻撃でした。さらに彼が追い打ちをかけたのが、読者をも絶望のどん底へ突き落としたこの告白です。
「志村転弧……志村菜奈の孫さ」「君がいつも振りまいていた笑顔の裏で……彼は生まれ落ちたんだよ」
自らが手塩にかけて育て上げた後継者・死柄木弔が、敬愛する師の実孫であったという残酷な事実の暴露。オールマイトの「平和の象徴」としての矜持を内側から崩壊させようとするこの一言は、週刊少年ジャンプ掲載当時からSNSやコミュニティで「少年漫画史上でも指折りの外道発言」として大きな話題を呼びました。
また、緑谷出久(デク)や死柄木を巡る争奪戦が激化した最終決戦では、もはや理性の仮面すら剥ぎ取り、剥き出しの征服欲を露わにします。単行本や配信サイトの考察班の間でも引用頻度の高い「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン。いい言葉だよな。悪の魔王はみんなが恐怖して全てを差し出すんだ。お前がそうであるように、みんなが僕のためだけに存在する」という独白は、彼の人生観そのものを端的に象徴しています。