物理的な鍵ではなく、3桁のスーツケースのダイヤル暗証番号を忘れた場合、破壊を伴わずに開けるアプローチは確立されています。3桁のダイヤルロックの組み合わせは「000」から「999」までの合計1,000通りしか存在しません。1秒に1つの番号をスライドさせながらラッチの押し込みを確認していく「総当たり検証」を実行した場合、所要時間はおよそ12分から15分程度です。夜間に鍵屋を手配して1時間待つ精神的ストレスと数万円の出費を天秤にかければ、最も確実かつ機材を痛めない正攻法と言えます。
さらに短時間で特定する裏ワザとして、ダイヤルの側面の隙間をスマートフォンのライトで照らし、内部の金属シャフトを観察する手法があります。ダイヤルを回転させていくと、特定の数字の真下だけ金属プレートに小さな「凹み(スリット・切り欠き)」が見える瞬間があります。3つのダイヤルすべてでこの凹みを視認し、そこから一定の数字(各輪に共通してプラス2やマイナス3など)をスライドさせると一発でロックが解除される構造的特徴を持った製品が少なくありません。
一方、今やスーツケースの標準仕様となったファスナー式(ジッパー式)において、海外のバックパッカーや現場職員の間で広く知られているのが、スーツケースのファスナーをボールペンで開ける方法です。
やり方は極めて単純で、閉じたファスナーのエレメント(務歯=噛み合っている樹脂部分)の継ぎ目に対し、ノック式ボールペンの硬いペン先を直角に強く押し込むだけです。エレメント同士の噛み合わせが外れ、左右にファスナーが裂けるように開き、スライダートップが鍵で固定された状態のままでも中の荷物に直接アクセスできます。開いたファスナーを元に戻す際は、ロックされた状態のスライダー(引手)を裂けた端まで手動で滑らせ、そこから再び反対側へ向けてジッパーを往復移動させれば、噛み合わせが元の状態に復元します。
ただし、近年のスーツケースには「防犯二層ファスナー(ダブルジッパー)」を採用しているモデルが増加しています。ペン先を押し込んでも噛み合わせが外れない構造になっており、無理に突き刺すとファスナーの布地が破断してスーツケース本体が二度と使えなくなるため、自分のバッグのファスナー構造が単層であることを確認してから行わなければなりません。