電波時計が合わなくなったとき、焦って様々なボタンをランダムに押すのは事態を悪化させるだけです。業界の技術マニュアルでも推奨されている、もっとも確実で安全な復旧プロトコルを実行してください。キーワードは「新品電池・リセット・窓際で16分放置」の3原則です。
まず最初に行うべきは、正しい電波時計の電池交換です。ここで多くの人が陥る罠が、「家にあった使いかけの電池」や「充電式ニッケル水素電池(エネループなど)」を入れてしまうことです。一般的なアルカリ乾電池の初期公称電圧が約1.5Vであるのに対し、充電池の電圧は約1.2Vしかありません。通常運針には耐えられても、電波時計の受信回路が求める規定電圧に届かず、最初から受信不能に陥る原因になります。メーカーの指定に従い、使用期限内の新しい単3または単4アルカリ(またはマンガン)乾電池を、極性(プラス・マイナス)を確認してセットしてください。
電池を入れたら、すぐに電波時計リセット方法に従って本体を初期化します。裏面や電池室付近にある「リセット(RESET)」と書かれた小さな窪みボタンを、爪楊枝や先の細いクリップなどでカチッと手応えがあるまで1〜2秒長押しします。すると針が早送りで動き出し、12時00分00秒(基準位置)でピタリと停止します。この初期化動作によって、内部マイコンに溜まった処理エラーや誤った時刻ログがすべてクリアされます。
続いて電波時計強制受信の手順に移ります。「強制受信」や「手動受信」「WAVE」と刻印されたボタンを長押し(通常2〜3秒以上)すると、秒針が受信待機モードを示す位置(一般的に12時位置、または文字盤上の「REC」「READY」の目盛)に移動して電波の捕捉を開始します。
ここからが最も重要なステップです。時計を「送信所のある方角(東日本なら福島方向、西日本なら九州・佐賀方向)を向いた外壁側の窓際」に置き、最低16分〜20分間、絶対に本体に触れず、周囲でスマートフォンを操作したりせず放置してください。
なぜ「16分待つ」必要があるのでしょうか。NICTが送出する標準電波のタイムコードは、1分間(60秒)を1フレームとして年・日・時・分を送信しています。電波時計のマイコンは、受信した信号の誤りを防ぐため、最低でも2回から3回連続して同一のタイムコードが正確に合致するかを照合するアルゴリズムを採用しています。電波の弱い環境では信号の読み取りに失敗して再試行を繰り返すため、1回の完全な同期を終えるまでに最短でも数分、通常は約12分から16分の時間を要する設計になっているのです。途中で時計を持ち上げたり動かしたりすると、電波の位相が狂って最初からやり直しになってしまいます。「針が激しく回っていても、12時で止まっていても、16分間は絶対に触らない」ことこそが、復旧の最大の秘訣です。