アジの開きを焼く際、多くの人が迷うのが「皮面と身面のどちらを先に火に当てるべきか」という問題です。料理番組やレシピサイトでも意見が割れがちなこの疑問ですが、結論から言えば「上火か下火か、あるいは直接伝導熱か」という熱源の構造によって完全に正解が分かれます。
まず、一般的な魚焼きグリル(片面焼き)のように「上から炎が当たる」タイプ、あるいは網焼きのように「下から直火を当てる」設備の場合、正解は「身から7割、皮から3割」の順です。魚のタンパク質は熱によって収縮します。最初に皮から焼いてしまうと皮が急激に縮み、身が反り返って均一に火が通らなくなるだけでなく、魚の表面に浮き出た上質な脂が網の下へ滴り落ちてしまいます。身から先に焼き、表面のタンパク質を凝固させて旨味の壁を作った後、裏返して皮をパリッと焼き上げることで、脂が身全体に染み渡るのです。
一方、近年主流となっているフライパン焼きでは力学が逆転します。フライパンは底面からの「接触伝導熱」で加熱するため、最初に身を入れると焦げ付きやすく、繊維が崩れる主因になります。フライパンで調理する際は「皮から中火で焼き、最後に身をサッと仕上げる」のが鉄則です。皮に含まれる脂をフライパン全体に溶き出し、その脂で自らを揚げるように香ばしく焼き上げることで、パリッとした食感とふっくらした身質を両立できます。