ネット上の議論で散見されるのが、「書き順など文字が完成していればどうでもいいのではないか」「漢検でも形さえ合っていれば減点されないのでは」という言説です。しかし、これは明確な誤解を含んでいます。
公益財団法人日本漢字能力検定協会が主催する漢字検定において、田漢検書き順は級を問わず頻出の出題項目です。検定試験の「筆順・画数」を問う直接問題では、「第3画目に書く線はどれか」という選択式または記述形式で試されます。ここで中央の横棒を選んでしまえば、当然ながら即座に失点となります。
なぜ歴史的に「縦が先」と定められたのか。その書道史的な理由は、文字の「重心の保持」にあります。四角い枠(構え)の中に均等な四分割の空間を作る際、中央の縦軸を先に引くことで、左右の余白が均等であるかを視覚的に測りやすくなります。先に横棒を引いてしまうと、上下のバランスが崩れやすく、中央の縦棒が左右どちらかに偏るリスクが高まります。毛筆文化の長い歴史の中で磨き抜かれた「最も均整が取れ、美しく書ける合理的な手順」こそが、現行の標準筆順として引き継がれているのです。