インターネット上の質問掲示板やSNSでは、「NPO法人に就職したが手取り16万円で貯金ができず、将来が不安で生活できない」「善意を搾取されている気がして退職した」という生々しい口コミが散見されます。なぜ、ここまでNPO法人の給料が安い理由が構造的に定着してしまったのでしょうか。現場取材から見えてくるのは、単なる経営力不足にとどまらない3つの構造的障壁です。
第1の要因は、「単年度助成金・行政委託金への過度な依存」です。多くのNPO法人が頼りにする公的助成金や委託事業は、原則として1年単位で予算が決定されます。来年度も同じ事業が採択される保証がないため、経営層は職員の基本給を固定費として大幅に引き上げたり、永続的な定期昇給を約束したりすることが構造上極めて困難になります。さらに、助成金の中には「人件費への充当比率」に厳しい上限を課しているものが少なくありません。
第2の要因は、「受益者負担の難しさと価格転嫁の壁」です。一般の営利企業であれば、原価や人件費の高騰分を製品やサービスの販売価格に転嫁できます。しかしNPO法人が救済対象とするのは、経済的困窮者、不登校の子ども、DV被害者など、市場経済からこぼれ落ちた社会的弱者であることが大半です。サービスを受ける当事者から十分な対価を徴収できない事業モデルである以上、利益率を自発的に引き上げることが難しく、人件費の原資が慢性的に圧迫されることになります。
第3の要因は、「善意に甘える組織体質と自己犠牲の連鎖」です。報道番組の特集や退職者の手記でも告発される通り、「社会的に正しいことをしているのだから、給料の低さや長時間労働は我慢すべきだ」という無言の圧力が組織内に充満し、経営努力による給与改善が後回しにされてしまうケースが後を絶ちません。