ノンセクシャルに対する社会的認識において、最も当事者を傷つけるのが「病気」「ホルモン異常」「過去の失恋やトラウマのせい」「経験が浅いだけ」という安易な決めつけです。大手メディアの特集報道でも、過去にパートナーや知人から「病院で治療を受けるべきだ」「本当の気持ちよさを知らないだけ」と心ない言葉を浴びせられ、アイデンティティを否定された女性たちの証言が取り上げられてきました。
精神医学および臨床心理学の観点において、ノンセクシャルは治療対象となる疾患(精神障害や性機能障害)ではありません。精神疾患の国際的診断基準である『DSM-5』においても、性欲減退障害(HSDD)とアセクシュアリティ(性的指向)は明確に区別されています。性欲減退障害は「本人が性欲の低下に対して強い苦痛や精神的ストレスを感じている病理的状態」を指すのに対し、ノンセクシャルは「本質的に他者への性的欲求を抱かないこと自体が自然なアイデンティティであり、苦痛の原因は本人の機能ではなく周囲からの不当な性規範の押し付けにある」という点で根本的に異なります。
また、「潔癖症だから身体に触れられないのではないか」という指摘も的を射ていません。手先が触れ合うことや添い寝、抱きしめ合う行為には幸福感を覚える当事者も多く存在します。衛生的な拒絶感ではなく、行為に付随する「性的文脈」や「性器の接触」に対する根本的な欲求の欠如であるという事実を、客観的なエビデンスとして認識する必要があります。