調剤薬局やクリニックの現場を取材すると、スティック軟膏の販売中止に対して患者から寄せられる切実な声が浮き彫りになります。
「仕事中に手がベタつくのが嫌で、キーボードを触る前に手軽に首筋へ塗れるフェルビナクスチックが命綱だった」(40代・IT企業勤務男性)
「湿布だと入浴後にかぶれて皮膚が剥けてしまう。かといって液剤は垂れてくる。スティック軟膏だけが唯一肌トラブルなく使える救世主だったのに……」(60代・主婦)
特に手指の握力が衰えた高齢者や、肩関節の拘縮で背中に手が届きにくい五十肩の患者にとって、固形スティックを患部に押し当てて滑らせるだけの塗布動作は、チューブ型軟膏や湿布貼りとは比較にならないほど自立度を高める行為でした。薬剤師への聞き取りでも、「使い勝手という付加価値が極めて高かった剤形だけに、単なる薬効成分の同等性だけでは患者の納得を得にくい」という現場の苦悩が語られています。