免許センターや指定自動車教習所で行われる認知機能検査の現場では、事前のシミュレーションでは想像もつかないアクシデントや精神的動揺が起こりがちです。実際に75歳以上の免許更新を経験した高齢ドライバーやその家族の手記、SNSや相談コミュニティに投稿された生の声からは、過酷なリアルが浮き彫りになっています。
東京都内の指定教習所で検査を受けた70代後半の男性受検者は、当時の状況を次のように証言しています。
「自分では物忘れなど全くない自信があった。ところが、イラストを16枚見せられた直後、いきなり『数字消去テスト(介入課題)』が始まり、『1と4に斜線を引け』と指示された。制限時間内に急いで数字を消しているうちに、さっき覚えた絵のイメージが頭から一気に吹き飛んでしまった。最初の白紙に思い出して書く段階で、手が震えて鉛筆が動かなくなった」(受検者の手記より)
また、同席した家族からの報告では、検査員の読み上げスピードや会場の独特の静寂感に飲まれてしまうケースが頻発しています。大手掲示板や知恵袋等のコミュニティでも、「タブレットの画面を強く押しすぎて反応しなかった」「隣の席の人が激しくため息をついていてペースを乱された」といった環境要因による失点が多数報告されています。
教習所のベテラン高齢者講習指導員は、現場の取材に対して次のように警鐘を鳴らしています。
「認知機能自体には何の問題もない健康な方であっても、『落ちたら免許を取り上げられるかもしれない』という極度の緊張から過呼吸気味になり、時間の見当識で『今日が何曜日か』すら思い出せなくなる場面を何度も見てきました。検査は学力試験ではなく、記憶の引き出しを開ける作業です。事前に問題形式と会場の雰囲気を頭の中で予行演習しておくだけで、現場での落ち着きは劇的に変わります」(高齢者講習指導員の取材証言)