インターネット上の掲示板や知恵袋などでは時折、「激痛に耐えていたら膿が破れて治った」「民間療法で乗り切った」といった危険な体験談が散見されます。しかし、頭頸部外科の専門医らが口を揃えて警告するように、扁桃周囲膿瘍が自然治癒しない決定的な理由は、その解剖学的構造に存在します。
のどの両脇にある口蓋扁桃(こうがいへんとう)は強固な「扁桃被膜」に包まれています。扁桃の表面で起きた細菌感染が進行し、この被膜を破って外側の結合組織隙(扁桃周囲隙)へと炎症が波及した状態が「扁桃周囲炎」です。そして、その組織の中にドロドロとした膿汁が溜まり、袋状の病巣(膿瘍腔)を形成した段階を扁桃周囲膿瘍と呼びます。
一度膿瘍(カプセル状の膿の溜まり)が完成してしまうと、病巣の内部には毛細血管が存在しないため、血液に乗って届くはずの免疫細胞も、飲み薬の抗菌薬も膿の内部まで十分な濃度で浸透できません。つまり、扁桃周囲炎から膿瘍への進行詳細まとめを辿れば明らかな通り、物理的に膿を外へ吸い出すか切開して排出しなければ、細菌の温床は体内に残り続けるのです。
「膿が自然に潰れて口から出た」という極めて稀なケースについても、専門医は警鐘を鳴らします。睡眠中などに破裂した場合、大量の膿が気管に流れ込み、重篤な誤嚥性肺炎や急性窒息を引き起こす極めて危険な事態に直結するためです。自力での快復を期待して放置することは、自ら命の危機を招く行為に他なりません。