華やかなタトゥーアートの現場に立つための入り口は、依然として険しい障壁に閉ざされています。一般的に彫り師になるには弟子入りという伝統的な徒弟制度を経るルートが現在も根強く残っています。
「最初の1年はマシンを握ることすら許されなかった。朝からスタジオのトイレ掃除、雑用、先輩彫り師の針やインクの準備、そして何千枚もの下絵(フラッシュ)描き。給与明細など存在せず、師匠から渡されるのは月3万円の『飯代』だけだった」――都内で独立を果たした30代の彫り師は、自著の手記やインタビューで当時の生活をそう述懐しています。
見習い期間中の給料は、労働基準法が適用される「労働者」とみなされないケースが多く、師匠と弟子の「個人的な信託関係」という名目のもと、実質無給または月数万円の手当で拘束される現場が少なくありません。生活費を工面するため、昼間はスタジオで10時間働き、深夜から早朝にかけてコンビニエンスストアや警備員の夜勤バイトに就くという二重生活を強いられます。豚の皮や人工皮膚シートを購入し、睡眠時間を削って針の深さを身体で覚える日々が1年から3年続きます。
この精神的・肉体的な極限状態に耐えきれず、見習い志望者の約70〜80%がプロデビュー前に業界を去ると言われています。近年では機材の進化に伴い、民間のタトゥースクールに通ったり、海外のオープンなスタジオで修行したり、YouTubeなどの教材を通じて独学で技術を身につける若者も現れています。しかし、機材の衛生管理基準やトラディショナルな図柄の文脈、業界内のネットワークを体系的に学べる弟子入りの優位性は、今なお色濃く残っているのが現場の偽らざる実態です。