スーツの2つボタンは下まで留めるとNg?失敗しない着こなしの新常識

スーツの2つボタンは下まで留めるとNg?失敗しない着こなしの新常識

スーツの2つボタンは下まで留めるとNg?失敗しない着こなしの新常識の詳細について、分かりやすい解説を取りまとめてご紹介します。

メンズスーツにおける「一番下のボタンは常に外しておく」というルールは、国際的にアンボタンマナー(Unbutton Rule)と呼ばれ、紳士服のドレスコードにおける基本中の基本として確立されています。なぜ、わざわざ付けられているボタンを留めてはならないのでしょうか。その核心には、現代スーツが持つ「構造的設計」と「機能性」という極めて合理的な理由が存在します。

最大の理由は、現代のテーラードジャケットが「一番下のボタンを留めないことを前提」にカッティング(型紙設計)されている点にあります。銀座の老舗テーラーのチーフモデリストは、アトリエでの取材に対して次のように設計思想の真髄を明かしています。

「現在のスーツの裾まわりは、フロントが自然に広がる『フロントカット』と呼ばれる曲線を描いています。上部のボタンのみを留めたときに胸元からウエストにかけて美しいウエストシェイプ(絞り)が生まれ、裾にかけて流れるようなドレープが形成される設計です。ここに無理やり下のボタンを留めてしまうと、生地が横方向に強く引っ張られ、腹部に不格好な『X字の引きつれジワ』が発生してしまいます」

服飾工学の観点からも、一番下のボタン位置は人間の骨盤や腰骨の上に乗るポジションに設定されています。ここを強固に留めてしまうと、歩行時や腕を動かした際の可動域が著しく狭まり、ジャケットが上方へとずり上がって背中に余計なたわみが生じます。つまり、一番下のボタンを開ける理由とは、形式的な儀礼だけでなく、「スーツ本来の立体的な美しさを保ち、布地の傷みを防ぐための機能的必然性」に基づいているのです。

清水 千尋
著者

清水 千尋

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。