激しい咳が何日も続いた際、胸部に生じる痛みは「咳のしすぎによる単なる筋肉痛なのか、それとも肋骨のヒビや重篤な疾患なのか」という強い不安を抱く方が大半です。咳は1回あたり約2キロカロリーを消費する激しい全身運動であり、胸郭を取り囲む肋間筋や大胸筋、腹直筋に強い負荷が連続してかかります。そのため、筋肉痛であるケースも多いのは事実ですが、筋肉の張りと骨や内臓のダメージは明確に区別しなければなりません。
痛みの発生部位によっても隠れている疾患は異なります。まず、胸の中央が痛い理由として頻繁に挙げられるのが、気管支炎や逆流性食道炎、あるいは重篤な心筋梗塞や大動脈解離などの循環器疾患です。胸の中央が締め付けられるように圧迫され、咳をするたびに胸骨の奥が焼けるように痛む場合、単なる咳き込みではなく心臓や大血管の重大なトラブルが疑われます。
一方で、胸の片側に痛みが偏っている場合も警戒を怠れません。左胸の痛みと危険な病気を考える際、狭心症や心膜炎といった心疾患の存在は絶対に除外できない要素です。特に痛みが左肩や顎、背中に放散していく感覚があるときは、一刻を争う事態を想定して即座に専門医へ相談する必要があります。対照的に、右胸がズキズキ痛む原因としては、肺炎や胸膜の炎症、胆嚢疾患の関連痛、あるいは右側の肋骨弓に対する強い衝撃による微小骨折などが代表格です。
医療従事者が初診時にチェックする「直ちに医療機関へ駆け込むべき危険なサイン」は以下の通りです。これらに該当する場合は、一晩様子を見るのではなく救急外来の受診を強く推奨します。
- 安静にしていても胸の奥が握りつぶされるように激しく痛む
- 咳とともに血痰やピンク色の泡状の痰が出た
- 突然の片側胸痛とともに、急激な息切れや呼吸困難が生じた
- 冷や汗、めまい、顔面の蒼白化を伴っている
- 38度以上の高熱が数日間にわたって下がらない