物語の舞台は、憲法第51条に基づき「国民クイズ体制」が確立された架空の日本。かつて国会が機能不全に陥り、累積債務と混迷に喘いでいた国家は、すべてをテレビ番組『国民クイズ』へと委ねる決断を下しました。この世界では、毎晩ゴールデンタイムに生放送される番組こそが最高権力機関であり、司法・立法・行政の三権を凌駕する絶対的な力を持っています。
番組に出場し、過酷な予選を突破して本戦で正解を勝ち取れば、回答者のどんな理不尽な願いも国家権力の発動によって強制的に実現されます。「特定企業への無制限の便宜供与」から「気に食わない隣人の国外追放」、果ては「片思いの相手との強制結婚」や「指定地域の日本からの独立」に至るまで、法と倫理を踏みにじる欲望が国家公認で叶えられていきます。しかし、敗者に待っているのは佐渡島での過酷な強制労働という名の地獄です。
加藤伸吉氏の圧倒的な筆緻で描かれる、狂乱のスタジオとテレビ画面に釘付けになる無気力な国民の姿は、娯楽に魂を売り渡した全体主義の恐ろしさをグロテスクかつ鮮烈に浮き彫りにしています。