なぜ日中ではなく、決まって「朝起きた瞬間」に顔が大きく膨らんでしまうのでしょうか。その最大の物理的要因は就寝中の重力バランスにあります。日中、人間が立ったり座ったりして活動している間は、重力によって水分(間質液)が下半身に滞留し、夕方に足がむくみやすくなります。しかし横たわって眠ると、下半身にあった水分が全身へと均等に再移動します。とりわけ顔の皮膚、なかんずく眼瞼(まぶた)の皮膚は人体の中でも極めて薄く柔軟な組織であるため、水分がわずかに溜まっただけでも目に見える腫れとして現れてしまうのです。
そこに追い打ちをかけるのが、典型的な引き金とされる塩分過多とアルコールむくみの生化学的なメカニズムです。塩分を過剰に摂取すると、血液中のナトリウム濃度を一定に保つ防衛本能が働き、身体は水分を外に排出せず細胞間に抱え込もうとします。またアルコールには一時的な利尿作用があるものの、血管を拡張させた後に脱水状態を引き起こし、浸透圧を正常化させようとするリバウンド反応によって翌朝の細胞外液貯留を急激に加速させます。
さらに見落とされがちなのが、日常的な睡眠習慣による影響です。就寝中の「うつ伏せ寝」は顔面に物理的な圧迫と体液のうっ血をもたらします。加えて、口呼吸による喉の渇きからくる脱水や、高すぎる枕による頚部の屈曲は頸静脈の血流を阻害し、顔まわりの静脈還流を著しく停滞させてしまうのです。