物語の深層において、すべての怪異と悲劇の起点となっているのが羂索という存在だ。彼は一千年以上も前から生存し、自らの脳を他者の肉体に移植する秘術を用いて、時代から時代へと死線を越えて生き渡ってきた。その名は仏教用語の「羂索」(衆生を救済するための縄)に由来するが、彼が繰り出す救済とは常人の理解を遥かに絶する狂気そのものである。
彼の真の目的は、日本全土の人間を天元と強制的に同化させ、超常の存在へと変貌させる「人類の強制進化」にある。己の知的好奇心を満たすためだけに、数百年単位で緻密な計画を積み重ね、呪詛師や呪霊と千年前の約束を交わしてきた。善悪という概念すら超越したその探求心こそが、彼を作中最も異質で危険な黒幕たらしめているのだ。