『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』における松尾芭蕉は、歴史上の厳格な俳人イメージとは真逆のベクトルに振り切られています。異常なまでに世間体を気にし、少しでも自分を大きく見せようと嘘を重ね、締め切り前には極限まで現実逃避を繰り返す姿は、まさに人間の矮小な欲望の煮凝りです。
しかし、単なる嫌悪感で終わらないのが増田こうすけ作品の真骨頂といえます。芭蕉が見せる「すぐに調子に乗るが、即座に想定外の反撃を食らって涙目になるリアクションの豊かさ」や、「理不尽な暴力を受けながらも曾良に依存し続ける孤独への恐れ」は、不思議と庇護欲や親近感を呼び起こします。完璧な人間など存在しないという真理を、徹底的なギャグとして体現しているからこそ、「クズ可愛い(愛すべきダメ人間)」という唯一無二のポジションを確立しました。