映画関係者やテレビプロデューサーが大泉洋を起用したがる最大の理由は、「観客に感情移入させるスピードの異常な速さ」にあります。演劇ユニット「TEAM NACS」の舞台で叩き上げられた基礎体力と確かな発声、そしてどんな突飛な設定であっても日常の地続きに感じさせるリアリティの構築力は、日本の俳優界でも稀有な才能です。
特筆すべきは、コメディリリーフからシリアスな悪役へのシームレスな移行です。『ハケンの品格』のようなテンポの良い掛け合いでは絶妙の間で笑いを生み出す一方、『鎌倉殿の13人』の源頼朝のように、目の奥からふっと光を消す「冷徹な静寂の芝居」で観る者を戦慄させます。ただ怒鳴る、泣くといった表面的な表現ではなく、声のトーンや視線の揺らぎ一つで登場人物の心の機微を語る繊細さこそが、専門家や視聴者から絶賛される所以です。