彼の生き様を語る上で欠かせないのが、元祖・旗本退屈男として一世を風靡した父・市川歌右衛門の存在だ。幼少期から映画界の巨星である父の背中を見て育ち、自身も名門・東映の看板俳優として若くして頭角を現した。
日本映画の黄金期を支え、数々の歴史的時代劇で刀を振るってきた経験は、彼の美意識を極限まで研ぎ澄ませた。父が遺した「役者は市井の人々に夢を与える存在であり、裏の苦労や衰えを見せるべきではない」という鉄則。老いを受け入れつつも惨めさを晒さない気高き姿勢は、東映の血脈と父への敬意から湧き出るものなのだ。